経営破綻で傷ついたJALブランド。旅のコミュニティ「trico」や公式SNSは再起にどう寄与したのか
ファンマーケティング、D2Cなど言葉はさまざまだが、いま顧客と直接つながろうとする企業が増えている。この連載では、コミュニティをはじめとするPRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)を実践するパートナー企業への連続インタビューにより、「なぜ直接つながる必要があるのか」「それに伴い企業は何を改める必要があるのか」を明らかにする。インタビュアーは花王で長らくブランドマーケティングに携わってきた弊社エグゼクティブ アドバイザーの石井 龍夫が務める。
JALはデジタルを用いて顧客とつながることにいち早く取り組んできた企業の一つだ。
2010年に経営破綻を経験するが、その1年後にはFacebookアカウントを開設。その後、Webコミュニケーション専門のチームを立ち上げて運用を本格化させ、現在は200万人程度のフォロワー数を誇る。
さらに、2019年には旅をテーマにしたコミュニティサイト「trico」を立ち上げる。登録会員が旅の写真を投稿し、JAL愛を語ることで、ある種自走的に熱を広げてくれる理想的な状態ができつつあるという。
顧客を知る上で直接接点を持つことの重要性は言うまでもないが、JALのビジネスにはもともと空港や機内で顧客とのリアルな接点があった。その彼らがデジタルの接点づくりにいち早く取り組んできたのにはどのような背景があったのか。
また、年間3000万人を超える搭乗者数と比べれば、「trico」の会員数は現状、雀の涙ほどの規模。一見すると事業貢献度の低いコミュニティは、JALに何をもたらしているのだろうか。
Webコミュニケーションチームを立ち上げ当時からリードしてきた山名敏雄さん、現担当の小西孝典さんにお話を伺った。
年に一度の搭乗機会に想起してもらうには
——私は花王という会社で長い間マーケティングに携わってきましたが、一般消費財メーカーにとって、デジタルを用いて顧客と直接つながる道を模索する理由は明白でした。我々のビジネスはBtoBtoC。顧客との間には常に小売店、さらには仮想敵としてのグローバルECサイトの存在があります。直接つながって顧客のことを知る努力をしなくては、いずれ膨大な顧客データを持つグローバルECサイトの下請けになってしまうという危機感がありました。けれどもJALさんの場合は違いますよね。もともと空港なり機内なりで顧客とのリアルな接点がある。にもかかわらず、SNSやコミュニティに取り組んできたのには、どんな理由があったのでしょうか?
【山名】「JALはもともと顧客とつながっているじゃないか」というご指摘はその通りなのですが、一方で僕らのビジネスには、顧客一人当たりの接触頻度が極めて少ないという課題がありました。
出張などで一年中飛行機に乗っているという人も中にはいらっしゃいますが、全体から見ればごく一部。帰省や夏季休暇など、年に1、2回しか乗らないという人がほとんどです。
消費財であればスーパーやコンビニに商品が並びますから、たとえ買わなくても日常的に目に触れる機会があるでしょう。けれども、飛行機はそうはいきません。放っておいたら本当に年に1回だけの接触になってしまうのです。
なおかつ飛行機を飛ばしているのは僕らだけではありません。日本国内はもちろん、海外も含めればものすごくたくさんの航空会社がありますから、普通にやっているだけではその中に埋もれてしまいます。
飛行機というのは、基本的にはボーイングやエアバスから機体を買ってきて、それをそれぞれの会社が自社のデザインに塗装して飛ばしています。ですから、機体そのものにそれほど大きな差はありません。
一方、機内でやっていることとしても、食事を提供する、映画が見られる、など。フルサービス系であればやはり大きくは変わらない。完全にコモディティ化したビジネスであり、何かプラスアルファがなければ「他でもないこの航空会社を選ぼう」とはならないのが正直なところです。
多くの人にとって年に1、2回しかない貴重な搭乗機会に第一想起してもらうには、搭乗時以外にも何らかのかたちでコミュニケーションをとる必要がありました。このような理由で始めたのが、SNSでの発信やコミュニティの運営ということになります。
——Facebookアカウントの開設が2011年。その1年前には、失礼ですが経営破綻を経験していますね。新たな取り組みを始めたことと経営破綻の間に何か関係はありますか?
【山名】私自身がチームに加わったのは2016年になってからですが、SNSを始めたのはまさに経営破綻がきっかけだったと当時のメンバーから聞いています。
破綻後、再生のチャンスを与えていただいたことについて日本全体に感謝の気持ちを伝えたい、また再生に向けていろいろと取り組んでいることを知ってもらいたい、そういう思いを社員が共通して持っていました。
折しも2011年は多くの人がFacebookアカウントを持つなど、世の中でSNSが流行り始めたタイミングでしたので「経営再建中で潤沢な予算がない中でも、これであれば自分たちでできそうだ」と考え、始めたのがSNSを用いた発信でした。
ただし、この時点でSNS専門のチームはありませんから、10人ほどの社員有志がアフター5に集まって、ああでもないこうでもないと議論しながら細々と始めたようです。
——JALさんに限らず、高度成長期の日本企業のビジネスは「いいものを作ったら、あとはお金を投じてマス広告さえ打っておけばOK」というモデルだったと思います。それは顧客に対して「上から目線」だったと言えなくもない。経営破綻がそうした企業姿勢そのものを改める契機になったところもありますか?
【山名】そうですね。破綻前、世の中にJALの印象を尋ねると「官僚的」「顔が見えない」という声が圧倒的でした。おっしゃるように「JALでござい」という上から目線なところがあったのは否定できないと思います。
世の中にそのように思われていることは当然社員も把握していました。破綻して新しく生まれ変わることを契機に、そうしたマイナスのイメージを払拭したい。そうした思いから、ちゃんと「中の人感」を出して発信する方針で始めたと聞いています。
少数だが熱量を持ったファンと深く接する
——SNSの運用に続いて、2019年2月には旅のコミュニティ「trico」を立ち上げています。なぜコミュニティだったのでしょうか?
【山名】残念ながら、世の中の大多数の人にとって飛行機は単なる移動手段です。いざ旅行に行くとなった時にどこにお金をかけるかと言えば、まずはホテルや食事であり、飛行機のグレードを上げようという発想はなかなか生まれにくい。
僕らとしてはJALの飛行機に乗ること自体も特別な旅行体験だと自負していますし、その楽しさを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思っている。けれども僕ら自身がそれを伝えようとすると、どうしても手前味噌になってしまいます。
そこで注目したのがコミュニティです。人数としては決して多くありませんが、世の中にはJALの飛行機に乗ること自体を楽しいと感じてくれている人がすでにいらっしゃいます。そういう人たちと丁寧にコミュニケーションをとっていくことで、お客さまご自身がその楽しさを発信し、周りにも熱が広がっていくのではないかと考えました。
——SNSだけでは足りなかったということでしょうか?
【山名】Facebookアカウントのフォロワー数は現在200万人程度であり、母数としてはこちらの方が圧倒的に大きいです。けれども、SNSはどうしてもこちら側からの一方的なコミュニケーションになってしまうと感じていました。
2016年にWebコミュニケーションを専門で行うチームができたと言っても、当時はメンバー4人の小所帯。お客さま一人一人と丁寧にコミュニケーションを行おうにも、リソースに限界がありました。
逆に「trico」のように母数が小さいからこそ、丁寧なコミュニケーションができる側面もあります。コミュニティに関しては当初から、規模にあまりこだわりすぎず、深さを追うことに重きを置いてきました。
——お客さまと直接つながる手段としてのSNSからさらに一歩進んで、お客さま自身が自走的に熱を広げてくれることを期待してのコミュニティだったと。コミュニティに着目したのはどの時点ですか? ソーシャルメディアを立ち上げた時点でコミュニティの構想もあったのか、それともSNSを運用していく中で課題なりアイデアなりが持ち上がったのか。
【山名】その点で言えば前者です。
私がこの仕事に着任したのは、2016年にWebコミュニケーションチームができたタイミング。ですからその時点で組織はあったのですが、この先何をしていくかという具体的なことは何も決まっておらず、ほぼ白紙状態でのスタートでした。
そこで着任してまず、JALがそれまでどのようなWebコミュニケーションを行ってきたのかという歴史を紐解く作業に取り掛かりました。それと並行して、世の中の先進企業がどのようなことを行っているのかのリサーチもしました。ネットで調べることもしましたし、夜な夜なセミナーに通ったりもしました。
そうして「世の中の企業がやっていて、まだJALができていないこと」をすべて洗い出し、今後4年間でどこを目指し、何をどのような順番でやっていくのかというロードマップを作りました。
その中には当初からコミュニティもありました。ただ、SNSでの発信などと比べると難易度が高いと思っていたので、すぐに手をつけるのではなく、2年後の2018年ごろに着手することとしてプロットしていました。
——JALが運営するコミュニティなのだから「JALブランドのコミュニティ」としてもよさそうなものですが、「trico」は「旅のコミュニティ」を謳っていますよね。実際に投稿される写真の多くも旅先での様子などを写したもの。なぜこのような打ち出し方をされたのでしょうか?
【山名】そこは立ち上げ前にイーライフの担当者さんともものすごく議論したところです。
認知度が高くて強いブランドであれば、そのブランドのコミュニティとしてもいいと思うんです。たとえばルイヴィトンがコミュニティを作ったと言えば、多くの人が自分の持つヴィトンのバッグの写真を投稿してくれるでしょう。そして、それを見たヴィトン好きの人たちが「こんな限定品があったのか」「いつか私も欲しいな」などと盛り上がる。それで十分に成立すると思うのです。
けれども、JALが仮にそれをやったらどうなるか。おそらくはサイトが飛行機の写真だらけになり、飛行機そのものが大好きな人しか入って来られなくなってしまう。そうすると僕らが期待するような広がりは生まれないのではないかと。このように考えて、僕らが狙うべきは「JALのコミュニティ」ではなく「旅のコミュニティ」だろうと結論づけました。
会員の皆さんには旅に関する写真を投稿してもらう。それは必ずしも飛行機や機内の様子を写したものでなくても構いません。見た人に「私もそこに行ってみたい」「旅に出たい」と思ってもらえればそれで良い。その上で「いざ旅に行くならJALで」と思ってもらえたらなお良い、というかたちで設計しました。
より具体的なことを言うと、旅先の写真を投稿する「発見レポ」とJALに関するものを投稿する「JALトーク」という二つの投稿枠を設けているのですが、実際の投稿比率は8:2くらいになっています。いろいろな旅先の写真に交じって、時折JAL要素の強い写真が目に入ってくる。結果としてちょうどいい塩梅に落ち着いているかなと思っています。
顔の見える関係が生み出す好循環
——現担当の小西さんにも伺いたいのですが、コミュニティを活性化させるためにどのような運営をされていますか?
【小西】「trico」はオンラインコミュニティですから、ユーザーの投稿がなければ始まりません。放っておいても投稿は増えていかないので、何らかのかたちで投稿を促す必要があります。
ただ、どれだけ投稿が増えたとしても、それを見た人が旅に出たいと思えなければ意味がない。そこで、投稿の量と質の両方を担保すべく、こちらで月替わりのテーマを設定し、テーマに沿った優秀な投稿を表彰するというコンテストを開催しています。
また、オンライン施策と並行して、2カ月に1回の頻度で、工場見学や商品開発座談会などのオフラインのイベントも開催しています。主にロイヤリティを高めたり、ファン同士の交流を促進したりするのが目的ですが、非常に楽しみにされている会員の方が多いです。
【山名】コミュニティを立ち上げた当初は、会員同士が顔の見えない状態だったこともあり、誰かの投稿に対して「いいね」まではついたとしても、なかなかコメントがつかない状態が続いていました。
リアルイベントを重ねて顔とユーザーネームが一致するようになるにつれ、段々とコメント数が増加し、現在では開設当時の4倍にまで増えています。
——オンラインで作った関係がオフラインでより濃厚になり、それがまたオンラインでの交流を促進させる好循環が回っているわけですね。
【山名】はい。ただ、これは最初から狙っていたことではありません。会員の中にはオンラインの匿名性をよしとしている人もいるかもしれない。そのような懸念があり、ユーザーネームを公開することにはこちらとしても慎重になっていました。
けれども、何回かイベントを行ううちに「思い切ってやってみるか」ということになり、ユーザーネーム入りの名札を作って配ってみたところ、これが思いのほか好評で。やってみてよかったという結果になりました。
——「公式で作った名札が好評」というのは、会員の皆さんからすると、自分の「trico」上の活動がJAL公式に「知ってもらえている」「認められている」と受け止められたからではないですか? ある種、承認欲求を満たすことにつながったのでは?
【山名】そうかもしれません。「知ってもらえている」「認められている」という話で言えば、コミュニティを始めるはるか昔からロイヤリティプログラム、いわゆるマイレージプログラムを実施してきました。
改めてご説明するまでもないかもしれませんが、飛行機に乗るほどにマイルが貯まる。そして貯まれば貯まるほどステータスが上がり、いろいろなサービスを受けることができる。そういう仕組みになっています。
けれども、これは一般のお客さまからするとものすごくハードルが高いです。「社用で月に2回出張に行く」といったレベルでもない限り、上位会員にはなれませんから。
ただ、上位会員ステータスに到達しない大多数の人の中には「年に2回しか乗らないけれど、乗る時はいつもJAL。もう何十年もJALにしか乗っていない」というお客さまもいらっしゃいます。僕としてはこういう人を増やしていくことが非常に大切なのではないかと思っているのですが、これまではそういうお客さまが認められる場がありませんでした。
コミュニティにはその可能性があります。コミュニティの場合はマイレージプログラムと違い、搭乗回数はまったく関係がない。JAL愛が強く、投稿を重ねることで、コミュニティの中で大きな存在になります。中ではアンバサダー制度などもやっているので、「あなたにtricoのアンバサダーになっていただきたい」とお伝えすることでより積極的に発信を行っていただく可能性が増す。そこは当初から狙っていたことでした。
実際、熱量の高い会員さんは、JALに乗ってどこかに出かけていく時にこの名札をつけていくそうなんです。そうすると、わかっている客室乗務員から「ああ、tricoの会員の方ですね」と話しかけられたりもする。そういうかたちでも会員さんと繋がる機会が創出されるわけです。
——いまのは対会員向けのお話ですが、一方で社内に向けてはどうでしょうか。コミュニティというのはどこまでいっても直接的な売上にはつながりにくい活動だと思うのです。それゆえに始めにくかったり、いざ始めても長続きしなかったりする企業も多い。御社では社内に意義をどう説明していますか?
【小西】「trico」に登録する際に会員番号を設定しているので、それを搭乗データと結びつけることで、「trico」での活動がその後、どの程度の搭乗につながっているのかを確認することができます。
実際にデータを見てみると、マイレージバンクの上位ステータスのお客さまと同じくらい高頻度でご利用いただいていることがわかります。
特にすごいと思ったのは、コロナ禍でもあまり利用が落ち込まなかったこと。一般のお客さまのご利用がかなり落ち込んだ時期にも、「trico」会員に限るとそこまで影響がなかった。私自身、着任直後にこうしたデータを目の当たりにし、本当にJALと密接な生活を送っているファンの方々なのだなと実感しました。
会社に対してもこうしたデータを用いてうまく説明するようにしています。
【山名】Facebookのような一般的なSNSだと、自社データと結びつけるのには技術的に難しいところがありますが、「trico」は独自ドメインを使っているので、それが容易です。
もちろん、お客さまのその後の行動のすべてが「trico」のおかげかはわからないわけですが、そこはアンケートなどと掛け合わせることにより、事業への貢献度を数字で示すことはできると思っています。
顧客の熱は従業員にも伝播する
——コミュニティの意義や価値を数字で示す努力をされているというお話でしたが、それ以外にも、コミュニティが社内にもたらしているポジティブな影響がありますか?
【小西】あると思っています。先日大阪に拠点を置くグループ会社のスタッフと話す機会があったのですが、そのスタッフは「tricoの会員の皆さんね。よく大阪に遊びに来ているよ」と言っていました。
大阪を訪れたというそのお客さまは、おそらく以前からJALのファンだったのだと思います。ですが、仮に「trico」というコミュニティがなかったら、スタッフがそのお客さまを認識することはなかったと思うんです。
私たちはこれまでロイヤリティプログラム、JALマイレージバンクのステータスという区分けでしか、お客さまのJALに対するロイヤリティを見ることができていませんでした。
そこに「trico」という枠組みができたことで、従来の枠組みには収まらないファンの方々を可視化することができた。そのことにより「我々はこういうお客さまにも支えられているのだ」と実感を持って感じられるスタッフが増えてきているのではないかと。
——それはとても重要なことですよね。お客さまが放つとんでもない熱量に直に触れることで「こんなにもJALを愛している方がいるのか」「この人たちに対して失礼な対応はできない」というように、従業員一人一人の、仕事やお客さまへの向き合い方がおそらく変わっていく。そういう効果があるのだとしたら、たとえ直接売上につながらなかったとしても、JALのブランドを向上させる一翼を担っているのだと十分言えるのではないでしょうか。
【小西】そうだといいのですが。「trico」会員の方から「今日の客室乗務員の方はtricoについてよく理解してくれていた」と嬉しそうに言われることがあるのですが、ということは、裏を返せばそうではないパターンも結構あるということで……。胸を張って「JALブランドに貢献している」と言うためには、「trico」の社内での知名度をもっともっと上げていかないといけないと思っています。
そして、いま以上にさまざまな職種の社員との接点を作りたい。あれだけJAL愛の強い「trico」会員の皆さんであれば、いろいろな職種のJALの社員と話すことがさらなるご満足につながり得ると思いますし、JALとしても、ゆくゆくは共創のようなところにまで持っていきたい。お互いにとってプラスの関係をさらに追求していきたいです。
——「お互いにとってプラス」というのは非常に重要なポイントですよね。すなわち顧客と企業は対等な関係にあるということ。今日お話を伺ってきて、御社のケースはそれをいいかたちで体現できているように感じました。
【山名】いまは異動してしまったのですが、かつて「trico」の担当に「トミー」という愛称のスタッフがいました。彼はJALのラグビー部のキャプテンで、週末にはラグビーの試合がある。その彼がある時、僕に促されるかたちで「今度試合があります。応援に来てくれませんか」と「trico」上で告知をしたんです。
するとそこから、日曜日にも関わらず、試合があるたびに7、8人の会員さんが応援に来てくれるようになった。しかも例の名札をして。「trico」というボードを持って。それほどまでにスタッフとの距離が縮まったといいますか。「対等な関係」を示す象徴的な出来事の一つなのかなと思いました。
「機内で出す新しいドリンクの味を決めるのに、試飲してくれませんか」「Webサイトの使い勝手の調査に協力してください」などと会員の方に声をかけると、みなさん驚くほど積極的に協力してくれるんです。僕らとしても、彼らに対してだったら「ちょっといいかな?」みたいに気軽にお願いできてしまう。
ロイヤリティプログラムの上位ステータスの方には、恐れ多くて同じようにはできません。そういう意味では、スタッフと顧客が近しい関係性にあるコミュニティならではと言えるのではないかと思います。
「PRM実践企業訪問」 第1回は、日本航空様に伺いました。
私は常々、“ブランドはお客様の心の中に出来る”と言っていますが、日本航空様は、コミュニティでお客様と濃厚な接点を持つ事でお客様にパートナーになって頂き、傷ついたブランドイメージの回復を果たした好事例だと思います。オンラインのみでは無く、オフラインのイベントも活用して、熱量の強いお客様がさらにその熱量を周りに伝えていく、それこそが、JALブランド復活の原動力だったのでしょう。
さらに学ぶべきことは、SNSの活用を計画した段階で、将来はコミュニティまで進めるというロードマップを明確にしていたところですね。SNS活用が目的では無く、どの様な体験をお客様と共有するべきかが最初から考えられていた点が素晴らしいです。これからも、誇りと愛着を持ってユーザーネームの入りの“名札”をつけたお客様が、従業員の心をも動かして、JALブランドを輝かせていくのだと思います。(インタビュアー/石井 龍夫)
イーライフ エグゼクティブ アドバイザー 石井 龍夫 花王株式会社にて14年間、数々のブランドマネージャーを歴任。新規事業としてアジエンスも立ち上げ。2003年からweb活用戦略立案・企画運営に携わり、デジタルマーケティングセンターを設立。センター長としてデジタルマーケティング活動を統括。2017年イーライフ エグゼクティブ アドバイザー就任。 早稲田大学 大学院経営管理研究科 非常勤講師、日本マーケティング協会マーケティングマイスター、日本アドバタイザーズ協会デジタルメディア委員会 委員、広告電通賞ブランドエクスペリエンス部門 審査委員長、C Channel株式会社監査役に携わる、マーケティングの第一人者。 |
(構成/鈴木 陸夫)