中小企業の越境EC活用

はじめに

こんにちは。コンサルタントの齋藤です。
グローバルなビジネス環境が急速に進化する中、中小企業が自社のビジネスを拡大するために越境EC（電子商取引）は大きなチャンスとなります。しかし、それを活用する上での困難もあることは否めません。今回は、その活用の道筋と課題について詳しく解説します。

中小企業が大企業を上回るEC利用率

一般的に大企業はリソースが豊富であるため、新しい技術やビジネスモデルを導入することが容易です。しかし、ECの活用に関しては異なる傾向が見受けられます。大企業ではECを利用している割合が31.3%であるのに対し、中小企業ではその数字が36.2%と高くなっています。さらに、EC利用を今後拡大したいと考えている企業も、大企業30.3％に対して中小企業は43.0%となっており、中小企業がEC活用により積極的であることが明らかです。

出典：2022年度ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

この理由として、中小企業の場合、オフラインで店舗を持つことや新たな販売ルートを開拓するよりもECを活用する方が参入障壁が少ないことが考えられます。例えば、アパレルブランドの中には当初ECのみで販売を開始し、その後オフライン店舗を開設するなど、ビジネスモデルが進化しているケースが見受けられます。

さらに、ECを利用している企業の中で、越境ECを活用している割合は年々増加傾向にあります。特に中小企業では48.2%と、約半数が越境ECを利用しているという結果が出ています。これは、海外への販路拡大を目指す中小企業にとって、越境ECが重要な戦略となっている証明であり、大企業以上にその利用が求められていると言えます。

出典：2022年版 中小企業白書の概要

越境ECにおける販売先のシフト

越境ECを利用する中で考えなければならないのが、販売先の選定です。JATROの調査では、海外でECを利用している企業の現在のEC販売先国・地域として、中国（39.6％）、東アジア（韓国、台湾、香港など）（37.0％）、米国（33.0％）、ASEAN（32.1％）が上位にランクインしています。

出典：2022年度ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

ただし、中国については特別な視点が求められます。中国は確かに世界のEC市場の52.1%を占める非常に大きな市場となっています。しかし、先ほどのデータを見るとEC販売先として中国を挙げる企業の割合は年々減少していることがわかります。これは、中国が大きな市場である一方、すでに多くの企業が参入しているので新規参入のハードルは高くなっていると言えるでしょう。

出典：経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査 報告書」

さらに、今後拡大したい販売先国・地域としては中国（29.5％）に対し東アジア（32.2%）やASEAN（40.7%）となり、東アジアやAEANとの回答が中国の割合を上回るようになりました。これはまだこれから成長すると見込まれる他国の市場へのシフトが起きているとも解釈できます。
このような市場環境を理解し、適切な販売先を選ぶことが、中小企業が越境ECを成功させるための重要なステップとなります。

出典：2022年度ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

中小企業が抱えるEC利用の課題

中小企業が越境ECに取り組むことで、海外マーケットへの参入や新たなビジネスチャンスの創出が可能になります。しかし、それらを活用するにはいくつかの課題を克服する必要があります。特に大きな課題となるのが、販売先国・地域に関する情報不足と自社ブランド認知度の向上です。国や地域による消費者の嗜好、法律、規制などの情報を把握し、また自社の商品やサービスを海外で知られるようにするためには、様々な取り組みが必要となります。

出典：2022年度ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

まとめ

以上、中小企業が越境ECに取り組むべき理由とその利点、そして課題について解説しました。グローバルなビジネス環境が進化し続ける中、中小企業が競争力を維持し、さらには新たなビジネスチャンスを創出するためには、越境ECの活用が重要となりますが、そのためには情報収集と自社ブランド認知度向上のための戦略も必要不可欠です。

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