コミュニティ運用担当者のナレッジ共有を目的とした「オフサイトミーティング2024春-2」を開催
開催の経緯
こんにちは。イーライフ広報担当の三浦です。
弊社では先日2日間にわたり、「オフサイトミーティング2024春」をオンライン開催いたしました。このミーティングは、コミュニティ運営やユーザーコミュニケーション施策における企業間の情報交換、あるいはナレッジ共有を目的として、コミュニティ運営ご担当者の方々をお招きして定期的に実施しています。
2日目も、4社4名のご担当者にご参加いただきました。
【参加企業一覧】 カゴメ株式会社様 / 東映アニメーション株式会社様 / 日本航空株式会社様 / マルハニチロ株式会社様 ※50音順、以下文中は敬称略 |
司会進行役は1日目同様、弊社アドバイザーの水野慎也氏です。前職のカゴメ株式会社にてデジタル・マーケティングに携わり、広告宣伝部門ではコミュニティサイト『&KAGOME(アンドカゴメ)』における”なかのひと”として運営していた実績があり、企業コミュニティ運営の第一人者として活躍されています。
水野慎也(みずのしんや) 株式会社アイ・ティ・アール シニアアナリスト / 合同会社ミッケテック 代表 カゴメ株式会社にて、情報システム部門、広告宣伝部門に在籍。サプライチェーンマネジメントをはじめとした情報システム構築他、Webサイト・SNSを活用したデジタルマーケティングを推進。また、広告宣伝部門ではコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を”なかのひと”として運営。現在、株式会社アイ・ティ・アールにてIT市場のリサーチに携わる他、企業コミュニティを中心とした顧客エンゲージメントに関する執筆活動と企業へのコンサルティングを行う。WebマガジンMarkeZineにおいて『Withコロナ時代、一歩先行くコミュニティの共創最前線』を連載。『未来ビジネス図解最新デジタルマーケティンク゛』(エムディエヌコーポレーション)の著者。 |
2日目もディスカッションテーマは2つ、「コミュニティ活用法」と「自社内におけるコミュニティ運営の悩み」です。大きなテーマは1日目と同様ですが、やはり企業さまが違えば施策も悩みも違います。1日目とは違った角度からの議論が交わされました。その一部をお届けします。
※1日目に開催した「オフサイトミーティング2024春-1」もご覧ください。
Theme1.-コミュニティ活用法
現在、各企業ご担当者がコミュニティサイトでどのような活動をしているか、またどのように活用しているかを伺います。それを受けて、他の企業担当者から感想や意見、質問を述べてもらい、ディスカッションへとつなげていきました。
水野氏: まずは、日本航空コミュニティサイト『JALの旅コミュニティ「trico」(トリコ)』の主な取り組みからお聞きしたいと思います。
日本航空ご担当者: 今年tricoが5周年になったので、3月に5歳の誕生日をお祝いする対面イベントを開催しました。今回のイベントは感謝を表すことが目的でした。節目のイベントとして、お祝いしたいという気持ちを持っている方をなるべく多く招待するため、前半と後半で90名ずつの2部制にしました。やはり対面で会話をすると、「オンラインだけではうまく言えなかったことが伝えられた」などの声が聞かれました。イベントをうまく織り交ぜていくことが大事だとあらためて思い、今後も継続していきたいと思いました。
trico5周年記念イベント実施のお知らせ
カゴメご担当者: 純粋に感謝を伝えたり、楽しんでもらうことに重きを置いているイベントというところが素晴らしいと思いました。弊社の場合、リアルイベントの参加人数はそこまで多くありませんが、通常のマーケティングと絡めて、伝えたいことや目的を明確にして、深い体験を提供する形で実施しています。
日本航空ご担当者: 今回は感謝を表すことが目的でしたので、チーム戦でクイズ大会をして楽しんでもらったり、客室乗務員やパイロットなども会員の方と一緒のテーブルに分かれて、楽しくトークをしてもらうことに重きを置きました。
水野氏: 次に、カゴメコミュニティサイト「&KAGOME」の最近の取り組みを聞かせていただけますか。
カゴメご担当者: これまで会員を無理に取り込まない方針でしたが、現在はカゴメに対してライトな関心を持つ方々にも「&KAGOME」を知ってもらうため、SNS連携を強化しています。InstagramやLINEなどで、コミュニティ内の活発なコミュニケーションの事例などを発信しています。
そして、私たちもリアルイベントを強化しています。例えば、にんじんジュースの原料を生産している契約農家さんの畑にコミュニティ会員を招待し、カゴメの社員と一緒ににんじんの収穫をしたり、収穫したてのにんじんをその場で食べてもらい、どれだけ美味しいのか体験してもらいました。さらに工場見学も行い、社員でもなかなか飲む機会がない『野菜生活』の原料となる野菜汁を試飲していただきました。
お客さまと契約農家さん、あるいはお客さまと社員をつなぐことは重要な役割と考えているため、なるべく色々な社員に参加してもらい、社内におけるそれぞれの仕事をお客さまに伝えてもらっています。
にんじんツアーレポート
水野氏: おもしろそうですね。そのイベントは商品とはどう関わっていますか。
日本航空ご担当者: 私もにんじんを選んだ意義をお伺いしたいです。
カゴメご担当者: カゴメというとトマトのイメージがあり、「&KAGOME」の中でもトマトのシーズンに合わせたコンテンツやイベントは夏に集中しており、他のシーズンのコミュニケーションが空きがちになっていました。そこで今年の冬はカゴメ初のにんじんの収穫体験イベントを実施しました。
市場に出回っていない収穫したばかりのにんじんは柿のように甘く、臭みがなくて美味しいです。この美味しさを知ってもらい、カゴメの技術によって、どのように加工されるかを伝えることで、にんじんのファンを増やしたいと考えています。最終的にはにんじんジュースのファンになってもらえることを目指しています。
水野氏: マルハニチロコミュニティサイト「Oishiine!!(おいしいね!!)」での取り組みについてお聞かせいただけますか。
マルハニチロご担当者: 23年度については、商品総選挙で会員の思い入れが強かったさば缶に狙いを定めて企画を進めました。お客さまに注力するものを教えられた感もあります。従来から社員がサイトに登場することは多かったのですが、完全に巻き込んで一緒に企画を進める経験は少なく、社内調整に苦労しました。
実施したのは、会員との「さば缶“最高レシピ”」共創プロジェクトです。会員からさば缶を使ったレシピを募集し、「さば缶」に関わる様々な部署の社員に声をかけ、実際に調理・試食・選考を行いました。その後、全日本さば連合会の広報担当“サバジェンヌ”こと池田陽子さんを審査員に迎え、会員も含めた決戦投票を実施しました。
さば缶のレシピブックも制作し、オフラインでのお披露目イベントを開催しました。このレシピブックは営業活動や展示会でも活用しており、会員との共創が良い結果を生み出した事例となりました。
会員と共創した最高の「さば缶」レシピ
日本航空ご担当者: 弊社では、「空からお届け便」という現地で採れた野菜や果物を空輸で運べるというサービスがあり、その魅力を知っていただきたいという思いがあります。朝採れたものと郵送で何日かかけて運んだものなどと比べて朝採れのおいしさを実感していただきたいです。本当は土地との結びつきを大事にして欲しかったので収穫体験なども入れたかったのですが、現状では難しいです。ですがカゴメさんやマルハニチロさんのお話を聞いて、考え方を学び、実現の可能性を知ることができたのは励みになりました。
食を通じて土地とのつながりができれば産地に何回も行ってくれるかもしれない、という一つの手段となり得ると思いました。
水野氏: 最後になりましたが、東映アニメーションコミュニティサイト「デジモンパートナーズ」の取り組みについてお聞かせください。
東映アニメーションご担当者: 会員との共創コンテンツ「パートナーズプロジェクト」では、今までもデジモングッズを共創しましたが、現在は『デジモンのLINEスタンプを作ろう』という企画が進行中です。どんなデジモンをスタンプにしたいか?そのデジモンにどんな台詞を喋らせたいか?などをサイトの中で決定していきます。
また、リアルとオンライン両方でファンミーティングも開催してきました。
「デジモンパートナーズ」にも海外のファンの方がたくさん参加してくださっているのですが、どうしてもイベントは国内開催になってしまうので、海外ファンの活性化が今後の課題です。
商品の売上も追ってはいますが、デジモンというIP(知財)全体がどうファンの人と向き合って拡大していけるかというところを会社として長期的な視点で考えています。
デジモンアドベンチャーは今年で25周年でもあり、親子2世代でのファンの方たちも出てくると思いますし、古参の方たちも盛り上がってくれるかなと思っています。
みんなでLINEスタンプを作ろう
カゴメご担当者: 親子2、3世代に継承させたいというのはおっしゃる通りです。弊社も運営している立場から、そのことを強く感じています。例えば、デプスインタビューで商品について尋ねると、「幼少期から必ずこのケチャップが冷蔵庫に入っていました」と、熱量の高いファンの方はそうおっしゃいます。やはり小さい頃から慣れ親しんだ味なので、自分が商品を買う親世代になったときにも家庭で使い、次の世代の子どもたちにも家庭の味として親しまれることは嬉しいし重要だとコミュニティの中で感じることがたくさんあります。
アンバサダーの企画でケチャップが大好きなファンの方と話せたことも大きなヒントになっていて、今後も仕組化して企画部と連携していけたらいいなと思います。
マルハニチロご担当者: 確かにそうですね。食品メーカーの場合、美味しそうなレシピ投稿をする人や料理上手な人たちを前面に出しがちです。でも、思い出の話をしてもらうと、「親子で」とか、「自分が独身だった頃に食べた」などが出てきます。そう考えると、異なる土俵をいくつか持つということは大事だなと思いました。
東映アニメーションご担当者:最初の作品である初代『デジモンアドベンチャー』が一番認知度は高いですが、それ以降のシリーズ作品のファンの方も結構いらっしゃいます。コミュニティサイトでは特定の作品に偏らず、各作品のファンの方たちが発信している印象があります。
日本航空ご担当者: 今回の話をお聞きして、コミュニティの中でファンの方が語ってくれ、それに触れることであまり興味がなかった商材にも興味をもってもらえるきっかけになるのではないかと思いました。
水野氏: コミュニティサイトを運営していると、単体の商品だけが好きで会員登録しているわけではなくて、複数の商品に共通して愛着を持ち、その会社全体が好きだという方が多いことに気づきます。そのため、社員との交流や、会員同士の交流が満足度向上に繋がることも理解できますね。
Theme2.-自社内のコミュニティ運営の悩み
水野氏: 次のテーマは、「コミュニティ運営における悩み」です。アンケートで事前に回答いただいた中に、「社内での認知度を高めるための工夫」というお悩みがありました。この悩みについては皆さんいかがですか。
カゴメご担当者: 社内には、まだまだコミュニティサイトをどう活用していいのかわからない人もいます。そこで、共創企画で会員の声を集めたり、一緒に作ったとか報告するだけではなく、マーケティング的な視点での成果や気づきをまとめた資料を毎月社内で発信することにしました。これにより、他の部署の社員が自分の業務に役立てられるという気づきを得てもらいたいと考えています。皆さんはどういった工夫をされているかぜひ聞かせてください。
マルハニチロご担当者: イントラネット内の社内報において毎回、広報課が若手社員の活躍を記事にしています。そのコーナーと連携して、コミュニティサイトの企画やイベントでの若手社員の活動も取り上げてもらいました。社内報は社員の注目度も高いので、社内認知を上げられたと思います。そうやって事業部の役に立つように周囲を巻き込んで一歩一歩信頼を重ねていくということしかないかなと思っています。
水野氏: 「&KAGOME」では社員がトマト苗を育てている企画があったかと思いますが、そちらをご紹介いただけますか。
カゴメご担当者: 「&KAGOME」には、会員が自分でトマト苗を育て、その過程を写真投稿する『トマコミ』という人気コンテンツがあります。今年から一般社員にもアカウントを作って企画に参加してもらう試みを始めました。今までは「&KAGOME」と関わったことがなかった社員も、会員から「いいね」やコメントをもらうことで、励みになったり、会員の熱量を肌で感じてもらうきっかけになればいいと思っています。
東映アニメーションご担当者: 弊社のコミュニティサイトは比較的社内の理解は得やすいです。目の前の売上も大切ですが、社員は会員の声を実際に聞きたいという希望が多いです。なので、担当者にイベントに参加してもらうことで、リアルなイベントでしか感じられない“肌感”を体験してもらうようにしています。会員と触れ合う機会は大切だと感じてもらえると思います。
日本航空ご担当者: 広く浅く周知したところで自分事としてはなかなかとらえられず、うまくいかないと思っています。何らかのイベントや共創企画などを通じてその企画部門にとって有益になると感じてもらうことが近道につながるのかなと感じています。企画している側からすると、よく分かっている会員の生の声を無償で聴けるという体験をした社員は、コミュニティの存在を忘れないと思います。
ここでカゴメのご担当者から日本航空のご担当者に、コミュニティサイトと他のSNSの連携や棲み分けについてはどのようにされているのですか、と質問がありました。
日本航空ご担当者: コミュニティと他の媒体とは、明確に棲み分けをしています。媒体が違うと利用層も変わってくると思うので、同じ素材を複数の媒体で使い回すことはせず、その媒体のメイン利用層を意識して、同じ内容でも、それぞれ動画や写真、メッセージも使い分けています。
徐々にファン化していった先にtricoがあるんだと知っていただきたいということはあるので、唯一Xでコミュニティの紹介することはあります。Xはリンクがつけられるので、販売促進や、実利を目的とした投稿にある程度の親和性があります。弊社ではそのように棲み分けをしていますが、正解は一つではないと思います。
カゴメご担当者: 媒体ごとに投稿を分けていらっしゃるのですね。それはとても参考になりました。
東映アニメーションご担当者: コミュニティサイトのほか複数の媒体で告知を行っていますが、お話を伺って、商品サイトとコミュニティサイトの告知は棲み分けて行っていった方がファンの方にとって使いやすくなるのではないかと感じました。
水野氏: マーケティング視点での成果を共有することも社内的には説得力があると思います。そして、SNSの使い分けの話は実践的です。今回も多くのナレッジを共有できて、有意義な時間でした。ありがとうございました。
参加者の声
最後に、今回のオフサイトミーティングに参加された皆さんからの感想をご紹介します。
「普段話す機会のない業種の担当社さまから、色々なお話しを聞くことができて良かったです」
「社内オウンドメディアとの連携も、親和性やファン度を考慮して連携する媒体を選定することも大切だと改めて感じました。また、イベントに関してはマーケティング的な活用も大事ですが、『感謝』を伝えることを第一目的としたイベントも今後企画していきたいと思いました」
「以前から機会があったら一度聞きたいと思っていた疑問に対する、他の企業さまの見解を知ることができ、大変参考になりました。今日は貴重な時間をありがとうございました」
「社内でもコミュニティ施策を行っている実績が多くなく、そのため手探りで運営をしている中、本日他社さまの事例等お伺いでき、大変参考になりました」
主催者後記-オフサイトミーティング2024春-2の振り返り-
2日間にわたるオフサイトミーティングがあっという間に終了しました。
企業コミュニティの運営に携わる担当者同士だからこそ共感できる部分や、悩みに対して異なる視点からの気づきが多くありました。
今回のレポートでは紹介しきれないほどたくさんの情報交換、ナレッジの共有がありました。このオフサイトミーティングで得たヒントを、皆さんのコミュニティ運営に活かしていっていただけたら嬉しいです。
弊社では今後も、今回のような会をはじめ、様々な企画や情報発信を行ってまいります。
他企業様とディスカッションしてみたいテーマなどがあれば、お気軽に担当者までお知らせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
■関連情報 参加企業プロジェクト一覧
&KAGOME (カゴメ株式会社)
デジモンパートナーズ (東映アニメーション株式会社)
JALの旅コミュニティ trico (日本航空株式会社)
Oishiine!!(おいしいね!!) (マルハニチロ株式会社)