亀田製菓のパーソナルコマース戦略「アドテック東京2022」レポート

はじめに

こんにちは。イーライフ広報担当・執行役員の石井です。
2022年10月20~21日、東京ミッドタウン&ザ・リッツ・カールトン東京で開催されたアジア最大級のマーケティングカンファレンス「アドテック東京2022」に弊社はEXECUTIVE STAGE Sponsorとして参加しました。
21日にはShopifyブース内イベントFuture of Commerce 業界のキープレイヤーが描くコマースの未来”において、亀田製菓株式会社の佐野氏とShopify Japan 株式会社の香山氏によるトークセッションが開催されました。
亀田製菓の全ブランドを扱う公式総合ECサイト「亀田製菓通販いちば」の構築と一部運用をサポートしている弊社にとっても、大変貴重なお話しを聞けましたので、本記事ではその様子をお届けします。

登壇者紹介

亀田製菓株式会社 事業開発部 通販チーム シニアマネージャー 佐野 扶美枝氏
花王株式会社にてマーケティング研究部門、商品開発部門を経た後、1994年から花王事業部門でブランド担当、ブランドマネージャー、グループ長を歴任。キュレル、リリーフ、ソフィーナプリマヴィスタ、オーブなどのほかカネボウ化粧品ブランドなど多数のブランドを担当。2017年退社。乳業メーカーのマーケティング担当役員、亀田製菓のマーケティング戦略部長を経て、2021年11月より現職。

Shopify Japan 株式会社 Shopify Plus シニア・アカウント・エグゼクティブ 香山 克彦氏
新卒で楽天グループ(株)に入社。楽天市場事業にて国内の出店営業とECコンサルタントを経て、新規事業として海外企業の営業戦略事業の立ち上げに参画。アメリカ(駐在)、韓国、中国マーケットの事業開発に携わる。2021年11月に日本におけるShopify Plusの営業第一号として入社。

(左から)Shopify Japan 株式会社 Shopify Plus シニア・アカウント・エグゼクティブ 香山克彦氏、亀田製菓株式会社 事業開発部 通販チーム シニアマネージャー 佐野 扶美枝氏

亀田製菓がShopify Plusを選んだ理由

亀田製菓のECサイト「亀田製菓通販いちば(以下「通販いちば」)は2022年9月のサイトリニューアルに伴い、そのコマースプラットフォームとして新たにShopifyの「Shopify Plus」が採用されました。
Shopifyは、LINEやFacebook、InstagramといったあらゆるSNSと連携することで「いつでも、どこからでも買える」=オムニチャネル・マーケティングを全世界規模で実現できるコマースプラットフォームです。
「亀田の柿の種」や「ハッピーターン」など誰もが知る定番商品をいくつも持つ米菓業界の老舗ブランドが、なぜ本格的にネット通販に取り組むのでしょうか。
香山氏の問いに対して、佐野氏は次のように答えました。

「弊社の商品はどこでも売っているのでECは要らないという意見は社内でもありました。でも、米菓を買ってくださるのはほとんどが50代以上のお客様です。そこで20代以下など若い方にアピールしたくても、彼らはコンビニやスーパーなどのリアル店舗で米菓を買いません。だから、私達のほうでお客様のいるところへ出ていくために通販は必須でした

ネットのショッピングモールへの出店もしましたが、取れる顧客データに限界があることがわかったそうです。やはり、自社ECによって顧客と直接つながることが大事だと再認識されたそうです。

1to1のコミュニケーションを求めていた亀田製菓はプラットフォームとしてShopify Plusを選択します。
佐野氏はその理由として……
・どんなステータスにお客様がいるのかを可視化できるので状況を把握しやすい
・お客様のセグメンテーションがしやすい
・お客様のデータをSHOP内で分析・解析できる
・専門的な知識がなくてもランディングページ作成やプロモーションメール配信が簡単
……などを挙げています。

さらに佐野氏はネットにおける顧客とのコミュニケーションの際に「Shopify Plusの公式パートナーであるイーライフさんにお手伝いいただき、技術的な面も含めきめ細かくサポートしていただいて感謝しています」と述べてくださいました。

顧客のステータスに対応した入念かつ最大級のプロモーション

いよいよリニューアルした「通販いちば」をオープンする際、最大限のプロモーションを打ったと佐野氏は振り返ります。
「私も長い間マーケティングに携わってきた人間なので、公開時に“初速のお客様”をキャッチするのが、いかに大事かはわかっています」

そこで亀田製菓が行った施策とは……
通常売価の半額でリニューアル限定詰合せセットを作り、リニューアルキャンペーンの目玉として1ヶ月販売したのです。
それに加え、週替りで米菓、防災食品、パン、お米と30%off価格の商品も提供。お客様が飽きずにリピートする購買動機につながりました。

しかし、ECサイトのリニューアル時の課題として挙げられるのは、新規顧客の獲得と同時に「既存顧客の移管」です。旧サイトのユーザーが新サイトでの再登録などの手続きを嫌がり、そのままフェードアウトしてしまうケースは珍しくありません。いくら新規顧客が増えても、既存顧客が減ってしまってはリニューアル効果が薄くなります。

亀田製菓の場合、既存顧客への対応も万全でした。
登録時に発行される割引クーポンは、新規顧客よりも、再登録する既存顧客のほうにインセンティブを高くしたのです。
その結果、既存顧客のリニューアルサイトへのスムーズな移管にも成功しました。

香山氏は「まさに会社総体制の魂のこもった仕掛けです」と絶賛します。

実際に通販いちばから商品を購入したという香山氏は“消費者目線”から、箱に記されている「この上に物を載せないでください」の注意や、開封後に最初に目にする御礼のメッセージなどにも感嘆されていました。

多くの施策が功を奏し、「通販いちば」ではリニューアル前を上回る集客を達成し、目標もクリアできたそうです。

Q&Aセッションが白熱

プログラムの最後には、会場の参加者の疑問に答えるQ&Aセッションのコーナーが始まりました。グローバル展開について、パーソナルコマースに関するコミュニケーションの課題についてなど、皆さんの関心は高く、次々と熱い質問が壇上へと向けられます。その一部を抜粋して紹介しましょう。

質問:亀田製菓における、今後の海外展開の戦略を可能な範囲で教えてください。
佐野氏:本当に難しい課題ですが、海外のショッピングモールを活用することも含めて検討していきたいと思っています。

参加者からの質問に回答する亀田製菓の佐野氏

質問:海外展開される場合の地域は?
佐野氏:まずは欧米と思っています。弊社の工場はアジアとアメリカにありアメリカは非常にやりやすいかと感じていますが具体的な検討はこれからです。

質問:お客様とのメールのやりとりについて教えてください。
佐野氏:メールで届くお客様の問合せなどに関しては8割くらいは私が一つひとつ返信を書いてます。お客様の状況はちょっとずつ違うので、テンプレートのまま送るのではなく状況に応じて文面を変えています。そうすることでお客様の個人ページにログが全部残り、他のスタッフもそのやりとりを読めば現在の状況を把握できるようになっています。

重要なのは1to1のコミュニケーション

活性化したQ&Aセッションもいよいよ終盤です。今回のパーソナルコマースのキーワードでもあった1to1についての質問が飛びました。

質問:1to1のコミュニケーションの中で特に大事にされている点は?
佐野氏:当たり前ですが、お返事はできる限り時間を置かないようにしていることです。それと、ちょっとしたことですが、自分のことをちゃんと見てくれてることがわかると嬉しいと思うので、届いたメールから相手の状況をしっかりと読み取り、それに応じた文面にすることをとても大事にしています。やはり最後は人と人なので、アナログの部分もとても大切にしています。

ここで佐野氏は商品とともに箱に入れている挨拶状について触れます。

「この挨拶状も別になくてもいいのですが、こういう気持ちって決してデジタルで語られるものではないので大事にしています。毎月変えるので苦労してるのですが、お客様から『挨拶文がよかったです』『かわいいです』などの反応が来るのは嬉しいです。」
まさに上に挙げた、香山氏が消費者目線で感嘆したところですね。

香山氏が「人気(ひとけ)」のエッセンスの重要性について言及しました。ECサイトは機械だけで動いているのではなく、裏には人がいてコミュニケーションを取っているのがおのずと顧客に伝わります。亀田製菓の取り組みにはまさにこの「人気」のある対応が組み込まれています。

今回のセッションを通して香山氏は亀田製菓に対して「ブランドとして大事なことを実践している」と感動していました。

パーソナルコマースの可能性、1to1コミュニケーションの重要性が語られた有意義なトークセッションでした。

亀田製菓様から「通販サイトをリニューアルしたい」と弊社にご相談いただいて以降、佐野様は迷わず「Shopify Plus」を選択され、私たちと一緒に様々な検討・準備を重ね「通販いちば」をリニューアルされました。
今回のトークセッションでは、佐野様みずからお客様へのメール対応をされている話も伺い、1to1コミュニケーションをとことん重視する亀田製菓様の姿勢に感銘を受けました。
国内はもとより将来的なグローバル展開においても、私たちイーライフがしっかりサポートしていきたいと思います。

■イーライフ実績
亀田製菓通販いちば | 亀田製菓株式会社

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